2012年に食品衛生法で食中毒の原因として明確に位置づけられたことで、「アニサキス症」は多くの人に知られるようになりました。
厚生労働省の食中毒統計でも、アニサキスはノロウイルスやカンピロバクターと並び、近年よく見られる原因のひとつとされています。
ただ、軽い症状で自然に治る場合もあることから、実際には数字に表れないケースも少なくないといわれています。
…と少し真面目な話になりましたが、まずは「アニサキスって結局なに?」から、分かりやすく整理します。
アニサキスとは?|寄生する魚・感染のしくみ
アニサキスは、クジラなど海産哺乳類や魚介類に関わる寄生虫(線虫)の一種です。
白い糸のように見える幼虫で、一般的に長さ2〜3cm、幅0.5〜1mm程度。寄生している魚が死ぬと、内臓から筋肉(身)へ移動しやすくなることが知られています。
アニサキス幼虫が寄生した魚介類を、生(不十分な冷凍・加熱を含む)で食べると、幼虫が胃壁や腸壁に刺入し、強い腹痛などの食中毒(アニサキス症)を起こすことがあります。

引用(厚生労働省)
なお、アニサキスは人の体内では長く生存できず、1週間以内に死ぬと言われています。痛みがあっても自然に軽快し、アニサキス症と気づかないまま治ることもあります。
原因食材としてはサバが多いとされますが、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどでも見られ、ほかの魚介類にも寄生している可能性があります。
※アニサキスを分解する動画は↓
※アニサキスの一生を分かりやすく描いたマンガは↓
アニサキス症の症状|胃と腸での違い
アニサキス症の多くは、急性胃アニサキス症です。
生鮮魚介類を生で(不十分な冷凍または加熱のものも含む)食べた後、数時間〜十数時間で発症することがあります。
- みぞおちの激しい痛み
- 悪心(吐き気)
- 嘔吐
一方、食後十数時間後〜数日後に症状がみられるケースは、急性腸アニサキス症と呼ばれます。
- 下腹部痛
- 腹膜炎症状(強い痛み・圧痛など)

引用(厚生労働省)
アニサキスの予防対策|加熱・冷凍が基本
予防の基本は、十分な加熱または一定期間の冷凍です。
加熱:70℃以上、または60℃で1分以上
冷凍:−20℃で24時間以上
生食での予防対策|家庭でできる現実的なやり方
生で食べるなら冷凍が有効ですが、家庭用冷凍庫は使用状況によって−20℃まで安定して下がらない場合があります。そこで、生食を前提にするなら次の対策が重要です。
- 購入時はできるだけ新鮮なものを選ぶ
- 丸ごと1匹なら、できるだけ早く内臓を取り除く(内臓は生で食べない)
- 身を目視で確認し、幼虫を見つけたら除去する
そして誤解されがちですが、次の方法ではアニサキス幼虫は死滅しません。
- 酢締め(食酢)
- 塩漬け
- わさび醤油
「味や風味」では対策にならないので注意してください。
アニサキス症になったら?|対処法(最優先は受診)
アニサキス症は予防が第一ですが、万が一発症した、もしくは疑いがある場合は、速やかに医療機関を受診するのが最も確実です。
受診時は、何を食べたか(魚種・食べ方・食べた時刻)をできるだけ具体的に伝えると、診断がスムーズになります。
注意:強い腹痛・嘔吐がある場合、自己判断で様子を見るのは危険です。特に腸アニサキス症が疑われる場合は、症状が長引くこともあるため、早めの受診をおすすめします。
業界関係者の裏話|「騒ぎすぎ?」と言われる理由
芸能人の発症などで話題になった「アニサキス騒動」ですが、水産業界内では「少し騒ぎすぎでは?」という声も少なくありません。
というのも、アニサキスは昔からいる寄生虫で、突然現れたものではありません。街の鮮魚店では、
「鮮魚店にとって、アニサキスに出会わない日がないほど当たり前の存在。昔から何も変わっていない」
という感覚もあります。2012年に食品衛生法が改正され、アニサキスの食中毒としての扱いが明確になったことが、注目度を押し上げた要因のひとつと考えられます。
また、現場では「万が一アニサキス症が疑われたら……」という文脈で、
「正露丸を飲めば大丈夫!」
と語る人もいます。
重要:ただし、これは一般向けに確立された治療法として推奨するものではありません。腹痛が強い・続くなど症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください(自己判断の服用で受診が遅れることが一番のリスクです)。
正露丸に含まれる成分「木クレオソート」については、アニサキス症用の薬剤として薬機法上の効能として一般にうたわれてはいませんが、活用に関する特許を取得している、と報じられています。
木クレオソートは、ブナやマツなどの原木から得た木タールを精製した液体。腸内細菌のバランスに影響を及ぼすことなく、腸の調子を整えることができる。同社は木クレオソートについて、アニサキス症の予防・症状改善のための薬剤としての活用に関する特許(特許第5614801号)を取得している。
引用(みなと新聞)
釣った魚をその日のうちに食べる場合、内臓処理をしても身に移動したアニサキスは見落としやすいのが実情です。
そうした見逃しを防ぐために、アニサキスを発見しやすくする専用ライトを使って確認する人も増えています。
あるアニサキスの一生
アニサキスを分かりやすく描いたマンガをどうぞ。


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